カテゴリ:20世紀の宗教書100選( 8 )

 一年以上もご無沙汰のシリーズ、がんばって調べ、書いてみました。『クリスチャニティ・トゥデイ誌』が選んだ宗教思想書100選シリーズ第8弾。CT誌の100選は書名のリストだけで、解説はついてません。
 ネット情報がかなり充実してきたので、いろいろと資料を閲覧し、参考にさせてもらいました。リストを作成しながら、自分がいちばん勉強になります。

55 『創作者の思い』(仮題 邦訳無し)ドロシー・L.・セイヤーズ
The Mind of the Maker by Dorothy L Sayers、(1893-1957年)
e0079743_18114347.jpg 英国の作家、キリスト教人道主義者。「ピーター・ウィムジイ卿」の推理小説で有名。アガサ・クリスティと並ぶ女性推理作家。本書は創作活動を、「アイデア」「実現(インプリメンテーション)」「相互作用(インタラクション)」という三段階に分けて解説。

 アイデア→制約を受けない頭の中での完成形。
 実現→時間、空間の制約を受け、物質の影響も受ける。
 相互作用→作られた創作が他との出会いで影響を与える。創作者が意図した使い方以外の、誤解、誤用、無視も当然起こってくる。

 本書が、宗教的なこととどう関係するかについては資料がなく、不明です。創造主である神と、その創造物、自然、人間との間にも、こうした作用があるということを言いたいのでしょうか? ご存知の方は教えてください。たしかフィリップ・ヤンシーが、彼女の著作を引用していたような気がする。

54 『キリスト教と社会的危機』(仮題 邦訳なし)ワルター・ラウシェンブッシュ
Christianity and Social Crisis by Walter Rauschenbusch(1861-1918)
e0079743_18203670.jpg 近代アメリカ・プロテスタント教界を代表する一人。牧師。社会的福音運動を指導。福音の視点から労働者の社会問題に取り組み、神の国の実現を目指した。人間の発展、進歩について楽観的な視点が基盤にあるので、リベラルな神学者と位置づけられましょう。
 そういう意味で、賀川豊彦の人間理解、社会理解と近いように思えます。

 M.ルーサー・キング牧師は、一時、彼の思想に傾倒したようですが、彼の楽観的な世界観とキリスト教を社会と安易に同一視する考え方に賛同せず、彼から離れる。ニーバーは、人間は罪深い存在であり、悲観的に見ていたので、「キリスト教的愛の実践で社会悪がいずれはなくなる」という人間中心の考えを批判したようです。そうであるにしても、キリスト教と社会福祉について論じた先駆的著作。

53『四枢要徳について』ヨゼフ・ピーパー著  松尾 雄二訳  知泉書館 (2007/05)
The Four Cardinal Virtues by Josef Pieper(1904-1097)
e0079743_1823344.jpg ドイツ人。ミュンスター大学教授 (哲学的人間学)。著書は、『アカデミックとはどういうことか』『哲学するとはどういうことか』『信仰について』『愛について』など多数。
 20世紀で最も卓越したキリスト教哲学者の一人。トマス・アクィナスの解釈を踏まえて、ヨーロッパの伝統的な「徳」についての全体像を描いた名著。正義とは何かを解く。それにしてもタイトルの「枢要徳」という用語はめったに耳にしませんが。

 100選ではないですが、ほかに彼の著作で興味深いのは、『余暇と祝祭』(講談社学術文庫)。e0079743_1824493.jpg 現代人が豊かな生活を享受するために、余暇の意味を考察。いかに人間らしく生きるかを展開。小著。



52『アンネの日記』 (文春文庫)
e0079743_1830538.jpg 言わずと知れた 『アンネの日記』の完全版。98年に新たに発見された5ページ分を加えたもの。あまりに有名ですが、読んだことありますか? 私は、まだです。でも、かつてアムステルダムを観光したとき、隠れ家を見学したことがあります。

第2次世界大戦中、ナチスの手を逃れて、アムステルダムの隠れ家で書きつづった13歳から15歳までの25か月間の日記。家族愛、恋、悩み、苦しみ、喜び、 夢と希望を記した少女による20世紀の魂の記録。


51 『生きる意味を求めて』ビクトール・フランクル 諸富 祥彦、松岡 世利子、上嶋 洋一訳
 Man's Search For Meaning by Viktor E. Frankl
e0079743_18364965.jpg
 フランクルの著作は、ありがたいことに、たくさん翻訳されています。それだけ日本に読者がいるということですね。

 ナチス強制収容所での体験から、彼のロゴ・セラピーの実践までを解説。
 どうしたら苦しみに向き合うことが出来るのか。その意味は何か。フラ ンク氏の思想の全体像が分かる。
 想像を絶する苦難にあって、どうやって希望を持ち続けることができるのか。心を打つ名著。
 「人生は、あなたを決して捨ててはいないはずです。
 あなたを必要とする何かがあり、あなたを必要とする誰かが必ずいる」



20世紀の宗教書100選 パート(5)No70-66
20世紀の宗教書100選 パート(6)No65-61
20世紀の宗教・思想書100選 パート(7)No60-56
[PR]
 しばらく休みました『クリスチャニティ・トゥデイ誌』が選んだ宗教思想書100選シリーズ第7弾です。
 各書の解説は、ネット上の資料をもとに、自分なりに短くまとめたものです。
 冒頭の番号は、「パート(1)のベスト10」だけが順位を示します。残りは、何冊目かを示すカウントダウンです。

60 『キリストと文化』 H.リチャード・ニーバー 著  赤城 泰 訳 日本キリスト教団出版局 (2006/02) Christ and Culture by H. Richard Niebuhr
 ニーバー(1894-1962)は、「静穏の祈り(平和の祈り)」で有名なラインホルド・ニーバー(1892-1971)の兄弟で、20世紀のアメリカの神学者。彼は本書で、キリスト者のこの世界との関係を五つの型に分類した。

1)「反文化的キリスト」 文化を徹底的に否定
2)「文化のキリスト」 信仰と文化を同一に見る。この世と妥協する。
3)「文化の上に立つキリスト」文化は理性、信仰は啓示として二つに切り離す。
4)「矛盾におけるキリストと文化」 ルターの「二王国説」が典型。キリスト者は「神の国」と「地の国」の両者に属し、両者に従順であることが求められ、葛藤がある。
5)「文化の変革者キリスト」 文化を否定せず、「神の国」と「この世」に分断されていると考える。現代の文化の中で生きながら、キリストのみこころを識別し、選択することが求められる。

 ニーバーは、この5)のありかたを推奨しています。
 最近、『アメリカにおける神の国』H・リチャード・ニーバー著(聖学院大学出版会、3,150円税込)が発売になった。

参考 ニーバー兄弟について
現在、よく話題の 「レスポンシビリティとアカウンタビリティ」についても先駆的に述べている。

59『イエス像の二千年』(講談社学術文庫)  ヤロスラフ ペリカン 著 Jesu through the Centuries by Jaroslav Pelikan(1923年-2006年)
 アメリカの神学者。マルティン・ルター全集(通称ペリカン版)の編纂者。
e0079743_18454377.jpg
(出版社の紹介より抜粋)
イエスは2千年にわたり、その生涯と教えをとおし、人間の存在や運命についての最も根本的な問いへの答えを、時代に応じて表現してきた。本書は、各時代の特徴を語るさまざまなイエス像を浮かび上がらせ、歴史の中に位置づけ、その時代の精神を明らかにした稀にみる労作。
 現在、『キリスト教の伝統 教理発展の歴史』のシリーズが教文館から刊行中。

58 『善人はなかなかいない フラナリー・オコナー作品集』 著、横山 貞子訳 A Good Man Is Hard to Find by Flannery O’Connor
e0079743_18414267.jpg
「MARC」データベースより
自分の都合で誰かが邪魔だと思い、その人にいなくなってほしい、との思いから殺人を行う主人公たちを描く5篇を収録。短編の名手による、暴力と殺人とユーモアと恩寵。

 著者( 1925-1964)はアメリカ人。大学生のころから小説を書き始める。アメリカ南部に暮らす人々を描く。かなりユニークなカトリック教徒。紅斑性狼瘡という難病で、39歳で亡くなる。フィリップ・ヤンシーは自分の著作で彼女によく言及している。多くの著作が訳されている。(私は読んだことありません。誰が読んだ人いますか?)

57 『聖なるもの』 (岩波文庫)  ルドルフ オットー 著 山谷省吾訳 (Rudolf Otto 1869年-1937年 The Idea of the Holy)

 ドイツのプロテスタントの宗教哲学者。キリスト教というより、哲学から宗教を見たらどうなるということを研究。宗教史をたどって、神聖なるもの、聖なるものへの感情を「ヌミノーゼ」と名付けて聖なるものの概念を追求。
 神秘学、罪、宗教哲学概説、インドの神話学についての著作もある。非合理的で情緒的なものこそが宗教の中核を成すとして、以後の宗教研究に大きな影響を与えた。
(この本は、ずいぶん前から岩波文庫にあることは知っていましたが、読んではいません。日本でも知られた本ですね。興味深いです。)

56 『アガペーとエロース 基督教の愛の観念の研究』(新教出版社)ニーグレン著 岸 千年、大内 弘助訳 (Agape and Eros by Anders Nygren)

 50年くらい前に邦訳が発行。現在、図書館か中古でしか手に入らない。スウェーデンのプロテスタントの神学者。その他彼について日本語資料はあまりない模様。
 (以下のブログーリンク先参照ーで、この本のよい紹介がありました。ここでのエロースとは、現在の俗説でなく、哲学におけるエロースのこと。

「Good News Collection」
アガペーとエロース その1
 基本的な語意、定義
アガペーとエロース その2

 エロースとアガペーの対比が面白い。
その中から、一部抜粋

エロースは、自己のための善の欲求である。
アガペーは、自己を与えるものである。
エロースは、上昇せんとする人間の努力である。
アガペーは、上から降ってくる。
エロースは、人間が神に行く道である。
アガペーは、神が人間に来る道である。
エロースは、人間の功績であり、救いを得ようとする人間の努力である。
アガペーは、無代価の賜物であり、神の愛のみ業である救いである。(以下略)

こんなまとめも書いてありました。

「エロースの見地からは、善悪の倫理的二元論の背後に、精神と物質の形而上的二元論が存在している。(略)従ってエロースの倫理は決まって禁欲主義に向かう傾向を示す。アガペーの倫理において、罪は霊魂が肉体のうちにあることと何の関係もない。罪は神に対する不従順と神を拒否することにおける意志の堕落である」
詳しくは上のリンク先へ。

20世紀の宗教書100選 パート(4)No75-71
20世紀の宗教書100選 パート(5)No70-66
20世紀の宗教書100選 パート(6)No65-61
[PR]
 久しぶりに、『クリスチャニティ・トゥデイ誌』が選んだ宗教思想書100選シリーズ第6弾をお届けします。
 各書の解説は、ネット上の資料をもとに、私なりに短くまとめたもの。
本タイトル冒頭の番号は、「パート(1)のベスト10」以外は順位ではありません。残り何冊かを示すカウントダウンです。
 
65 ローランド・ベイントン著 『我ここに立つ マルティン・ルターの生涯』 青山一浪、岸千年訳(聖文舎、1954初版、1962再版、625頁) 現在入手困難
 Here I Stand by Roland bainton

 宗教改革者ルターについての代表的な伝記。彼はローマ皇帝の裁判に立たされたとき、こう言った。「わたしは聖書と明白な理性によって確信するのでないかぎり、教皇と教会会議の権威を認めません。わたしの良心は、神のことばにとらわれているのです。わたしは何も取り消すことはできないし、取り消そうとも思わない。なぜなら良心にそむくことは正しくないし、安全でもないからです。神よ、わたしを助けたまえ。アーメン」
 有名な言葉ですね。とくに、そのとき語られたとされる「我ここに立つ」は、ベイントンによると、その場で語られたものでなく、あとから加えたものらしい。
 最近、ローマ教皇がプロテスタントは「教会として認めない」という文書を発表して論議を呼んでいますが、いまもって、ルターの宣言が意味をもっている現状を見ます。ルターについては、いろんな伝記が出ていますが、本書は第一にあげられる書。

64 ウィラ・キャーサー著 『死を迎える大司教』 刈田元司 訳(荒地出版社 , 1957年 477p)現代アメリカ文学全集 /2 刈田元司 [ほか] 編
Death Comes for the Archbishop  by Willa Cather(1873-1947)

 19世紀、ニュー・メキシコの砂漠地帯に、ヨーロッパからやってきた二人の神父が、孤独と苦しみをへながら使命をまっとうし、大聖堂の中で死を迎えるというもの。ナバホ・インディアンをはじめとする初期アメリカの風土が描かれていて、植民地時代のアメリカやキリスト教が伝わる以前のニュー・メキシコを舞台に繰り広げられる小説。
 世界的なヴァイオリニスト五嶋みどり氏は、この著者の作品が大好きだと公式サイトで述べています。

e0079743_22192532.jpg63 アニー・ディラード著 『ティンカー・クリークのほとりで』金坂留美子、ぼたのぞみ訳 (めるくまーる社)
Pilgrim at Tinker Creek by Annie Dillard

 1975年度ピュリッツアー賞受賞作。アニーは20歳で都会の喧騒を離れ、ヴアージニア州の山あいの小川のほとりに一人移り住んだ。ひたすら自然を見つめていると、素朴な常識をはるかに越えた、なにやら不条理なものが見えてくる。生命の奇怪な豊饒さ、残酷さ、美しさ。自然はなぜこれほどまでに複雑なのか。(アマゾンの紹介より)

 命とは何か、死とは何か、世界とは何かを執拗に追及し続ける鮮烈な書。「空が澄み切って美しいのは、山が高いのは、生命の力ではなく、死の力だ」と言い切る。産まれ、死んでいく生物の無意味さ、それがなぜなのかと厳しく問いつめていく。大変、魅力的な本らしいです。

62 ラルフ・エリソン著 『見えない人間』(1)(2) 松本望訳(南雲堂フェニック)
e0079743_22281445.jpg
Invisible Man by Ralph Ellison

 白人中心の文化にとって見えない存在であるアフリカ系アフリカ人の苦況を、人間のアイデンティティの追求という、大きなテーマに結びつけた小説。
 主人公の「僕」は、ニューヨーク・ハーレムの廃墟になったビルの地下室の穴ぐらに独りで暮らす黒人青年。「私は、家賃無しでビルに住んでいます。そのビルは白人専用です。ビルの地下に住んでいるのですが、そこは外界から閉ざされ、19世紀の間、人から忘れられたところです」という語りで物語は始まる。

61 ジャック・エリュール著 『技術社会』上・下 島尾永庚他訳(すぐ書房)
The Technolgical Society by Jacques Ellul

 著者はフランスの哲学者、社会学者、神学者、歴史学者。ボルドー大学教授。アナキスト(無政府主義者)と言われる。40冊以上の本を書き、現代の科学技術について、もっとも深遠な考察をした哲学者の一人。技術の発達が、キリスト教信仰と自由を圧殺しかねないとしている。
 人間は信仰を必要としているが、宗教や政治で、信ずるに足るものが提示されなくなっている現代にあって、技術がめざましい進歩を提供しているかに映ることへの警鐘。
 エリュールは、欧米でかなり有名な人らしいですが、日本のキリスト者の文献にあまり引用されないのはなぜでしょう。難解だからでしょうか?

 以上の五冊のうちどれかを読んだ方がいましたら、感想をコメントいただけるとうれしいです。私はまだどれも読んでいません。

20世紀の宗教書100選 パート(3)No80-76
20世紀の宗教書100選 パート(4)No75-71
20世紀の宗教書100選 パート(5)No70-66
[PR]
『クリスチャニティ・トゥデイ誌』が選んだ宗教思想書100選シリーズ第5弾です。邦訳を発見する調査がなかなか大変。訳されてないのもありますし。
各書の解説は、ネット上の資料をもとに、自分なりに短くまとめたものです。
本タイトル冒頭の番号は、「パート(1)のベスト10」以外順位ではありません。残り何冊かを示すためです。

e0079743_16284914.jpg70 『アルコホーリクス・アノニマス』 (A5版 3000円 625ページ)
The Big Book of Alcoholics Anonymous

 1939年に初版が発刊。世界中に普及していて、アルコール依存症からの回復への力となっている。第一部が解説、第二部に個人の回復の物語(体験談)を収録。
 訳本はサイズによって三、四種類あるらしい。ポケット版から大型版まで。邦訳のコンパクト版には、第二部は省略してある。人間の力を超えた存在を認め、自分の無力を認めることから始まる12ステップの手法は有名。
 日本のAAの組織の出版物一覧がある。AA関係書籍一覧

69 アーネスト・ベッカー著『死の拒絶』(平凡社 470ページ 邦訳1989)
 The Denial of Death by Ernest Becker

 古本でしか手に入らない模様。文化人類学者による考察。1974年ピュリッツアー賞受賞。
 人はなぜ死を恐れ、それを拒絶しようとするのかといテーマを、フロイト、ランク、キルケゴールらの思想を手がかりに深める。死があるのに、人間はなぜ存在し、生きていかねがならないのか。人間の本質、生きることへの意味について、今日も光を与え続けている書。

68 ロバート.N.ベラー他著『心の習慣』─アメリカ個人主義のゆくえ(みすず書房 420ページ 邦訳1991 価格: ¥ 5,670)
 Habits of the Heart by Robert N, Bellah et al.

 アメリカ中産階級の200人余りにインタビューし、「個人主義」という「心の習慣」をそこに発見する。 その一つが、功利主義的個人主義で、「この世は勝てばいいんだ」という外向きの個人主義。もう一つは、表現主義的個人主義で、「自分さがし」という内向きの個人主義というもの。この二つの個人主義が、アメリカの原則的自由主義と競争社会を支えてると見る。「みんなが努力すればよくなる」というの考えの裏で、弱者が切り落とされる現実。経済中心のアメリカ社会が招く危機を指摘し、人々の互いのケアが大切だと主張。

e0079743_16283270.jpg67 第二バチカン公会議公文書解説全集(監修南山大学 中央出版社 68-69年 全7巻あるが、各600-800ページくらいある。現在ほぼ品切)
The Documents of Vatican 2

 その中で手に入るのは、第7巻『公会議公文書全集』の中の日本語のみを収録した『第二バチカン公会議公文書全集』(中央出版社 1948円 437ページ 1986年)

 解説は、ウィキペディアで。たいへんな量の文献だが、数十年たっても重要であることに変化なし。第2バチカン公会議
 もう何年かしたら、第3バチカン公会議が開かれるとか・・。

e0079743_18191661.jpg66 ドロシー・デイ著『長い孤独』(邦訳無?)
The Long Loneliness by Dorothy Day

 日本のキリスト者の間で、あまり知られていないよう思えるが、世界的に大変有名な20世紀の女性社会活動家。カトリック教徒。若い時期に無神論者であったが、のちにキリスト教的社会活動家となり、カトリック労働者運動(Catholic Worker Movement)の創立者となった。ウィキベディアを参照。ドロシー・デイ(1897-1980年)

 ドロシーは無神論者だった若い頃、同じ共産主義の活動家との間に子どもを設ける。しかし、自分が生んだ赤ちゃんを抱いたとき、人間存在に対する畏敬の念にとらえられ、思わず祈りにうながされ、信仰をもつにいたる。その結果、パートナーに棄てられる。その後、彼女は子どもを抱えてのシングルマザーとして、「長い孤独」の旅を始める。
 絶望的な状況で、長いあいだ祈り求めていく中で、ニューヨークである人と出会い、社会活動家としての生活を始める──。
 本書は彼女の自伝。どうやら邦訳はないらしい。もったいない。

 絶望の中での祈り(japan-lifeissuesのサイトでデイの半生を短く紹介。上の文はここを参照したもの)
 ドロシー・デイを描いた映画もあるらしいが、探しても不明。
 知っている人がいたら教えてください。

20世紀の宗教書100選 パート(2)No90-81
20世紀の宗教書100選 パート(3)No80-76
20世紀の宗教書100選 パート(4)No75-71
[PR]
『クリスチャニティ・トゥデイ誌』が選んだ宗教書、宗教思想書100選シリーズ第4弾です。
 これらの文献は、クリ・トゥデイ誌が、その内容に賛同し、同じ立場をとるということではなく、これからの時代に重要な内容、問題提起を含んでいるという選定でしょう。

75 チヌア・アチェベ著 『崩れゆく絆』--アフリカの悲劇的叙事詩( 門土社)
  Things Fall Apart by Chinua Achebe  現在入手困難
 
 アフリカの伝承物語の系譜に属する、わくわくするような魅力的な本らしいです。著者はナイジェリア人(1930〜)。英語でのアフリカ文学の父。
 それまで白人から見た黒人の文学しかないことに違和感を覚え、アフリカ人の目から見たアフリカ社会、アフリカ人を書こうとしました。キリスト教徒に生まれた彼は、欧米文化とアフリカ文化の入り交じった中で育ちます。
『崩れゆく絆』では、主人公が怒りの感情から暴力をふるう姿を風刺的に語っているそうです。世界で一千万部以上売れ、50以上の言語に訳されたそうですからすごい。
 アチェベは、それまでの西洋文学で描かれたアフリカ人像がゆがんだものであり、人種差別的な価値観を含んでいると主張し論議を呼びました。アフリカ人の小説家として西洋で大きな名声を得、数々の賞を受賞しています。詳しく知りたい方はネットで検索してくだい。

e0079743_1993847.jpg74 カール・バルト著 『ローマ書講解』(平凡社)
  The Epistle to the Romans by Karl Barth

 人間主義的な近代神学を批判し、神と人間の断絶を唱えながら、逆説的に信仰の絶対性を回復させようとしたカール・バルトの代表作。二〇世紀のキリスト神学に革命をもたらすと同時に、現代哲学にも大きな影響を与えた歴史的名著(「BOOK」データベースより)

 膨大な大著『教義学』を読み切った人は少ないらしいですが、この書物はいまでもよく読まれているらしいです。バルトの著作群から、後世に残すために一冊だけ選ぶとしたら、真っ先にこの本が挙げれるそうです。
 私? もちろん読んだことはありません。(笑)

e0079743_1975688.jpg73 ボンヘッファー著 『ボンヘッファー獄中書簡集』(新教出版社)
Letters and Papers from Prison by Dietrich Bonhoeffer

 100選の中の「ベスト10」にも一度選ばれた神学者。二度登場するとは、かなり重要な人なんですね。(上のバルトもそうです)
 獄中書簡のなかに、「神の前に、神と共に、神なしに生きる」という、ドキッとするような有名な言葉があるそうです。
 これは、「神が存在しなくとも、超越者の存在を信じて生きる」という意味でしょうか? では、キリスト教徒である意味はどこにあるのでしょう?
 ナチスに協力したドイツの多くの教会やキリスト教に絶望して、発した言葉なのでしょうか。彼についてある所で読みましたが、それまでの「幼児的なキリスト教や未成熟な宗教組織」に頼らず、「大人として、真の神を信じる時代が来た」「そのように、神は人間を創造した」ということらしいです。(間違っていたらごめんなさい。)

 ただ、この言葉、表面的にとらえたら誤解すらする内容ですね。実存主義的神学者らしいですが、深刻にして、深遠、むずかしそうです。より深みのある神への信仰ということなのでしょう。かなりのキリスト者に尊敬され、いまの日本でも著作が毎年のように出版されています。
 かつて福音派では、「ボン・・・」「バル・・」という名前が口から出ることさえ、警戒されたそうですが・・。それが、よかったのか、なさけなかったのか・・。沈黙・・・。

e0079743_1973934.jpg72 エミール・ブルンナー著 『出会いとしての真理』(教文館?)
  Truth as Encounter by Emil Brunner

 スイス人の神学者。「出会いの神学」を提唱した人。人はいつでも、出会いによって生気を与えられ、支えられ生きる存在だということを追求した学者。魅力的な内容ですね。たしかに人間がコントロールできない出会いというものが私たちの人生で大きな役割を果たしています。このブログも出会いの場と言えそう。

「教理のなかに真理を見出すのではなくて、神と人間との生きた現実のなかに真理を見出すことができる」と言っているそうな。教理は不要だというのではなく、「真理」がどこにあるか、ということなのでしょう。
 戦後、一時、国際基督教大学で教えていたのは有名。「あの世界的学者が、敗戦で貧しい日本に来てくれた・・」と。感動的です。
 以下のサイトが、ブルンナーについて知るのに、よさそうです。大量な文章ですが・・。
「ブルンナーを読む会」

 ブルンナーの言葉:「究極の<真理>とはイエス・キリストの人格において啓示された神と人間との人格的出会いだ、ということである。これが第四福音書における<真理>の概念であると私は考える」

71 デイビッド・ボッシュ著 『宣教のパラダイム転換』(上・下)(新教出版社)
 Transforming Mission - Pradigm Shifts in Theology of Mission by David Bosch
2001年に邦訳が出たが、もう手に入らない。ネットで本を買いたくても出てきません!

 日本のキリスト教会を横断するような複数の訳者によって訳されたユニークな宣教論。
 著者のディビット・ボッシュは、南アフリカ人。これまでの西洋一辺倒の宣教スタイルは転換を迫られていることを述べている。歴史上、キリスト教国で起きた大量虐殺、それを許した西洋のキリスト教界へ容赦ない目を向け、その体質、人種差別、他宗教(マイナーな存在のキリスト教の派も含む)への偏見を批判し、これからのあり方を提案しています。日本でも牧師の間で話題になった書物です。この本に言及したサイトはいくつかありますね。

 たいへん面白い貴重な文献と思われますが、上・下巻で1万円以上します。しかも、手に入らない! 中古本を探すか、借りるしかなさそう。惜しいね。

20世紀の宗教書ベスト10--100選パート(1)No100-91
20世紀の宗教書100選 パート(2)No90-81
20世紀の宗教書100選 パート(3)No80-76
[PR]
 クリスチャニティ・トゥデイ誌が選んだ宗教書、宗教思想書100選(過去、キリスト教書100選としてきましたが、修正します)について、「これからの展開を期待します」とのコメントをいただきましたので、はりきって続きを書きます。ただ、一度に10冊は多いので(私も調査する時間が・・・)5冊ずつの紹介にすることにします。

80 ハイム・ポトク著 『選ばれしもの』(ハヤカワ・ノヴェルズ)
  The Chosen by Chaim Potok (邦訳絶版)

 ユダヤ人作家(ユダヤ教徒)。私は最近、ナウエンの本を訳していて、初めて知りました。ところが、その何年も前、「この本面白いよ」と洋書でもらって私の机の上にそのままにしてあったのがこのThe Chosenでした。あれまー。不思議なつながりを感じます。
 記憶力抜群の子どもをさずかった人の物語。その父が沈黙で息子に伝えるものとは・・・。涙なしに読めない感動作のようです。(私が勘違いしていなければ)。現在、手に入りやすい短編集『ゼブラ』(青山出版社)をはじめ、この作家のものは、かなりいいらしいです。誰か読んだ方いますか?

79 ポール・トゥルニエ著『人間・仮面と真実』(ヨルダン社)
  The Meaning of Person by Paul Tournier

 トゥルニエの本は、日本でドイツ語からもフランス語からも訳されていて、英語のタイトルがどれにあたるのか不確か。たぶん、代表的な著作The Meaning of Personとされるものは『人間 仮面と真実』だと思われます。翻訳がよいかは確かめてませんが、この代表作は私、まだ読んでいません。たくさんの本が過去に訳されているので、何冊か読んだ人が多いでしょう。私も彼の著作から大変教えられてきました。
 キリスト教的人間理解に基づいて『人格医学』を提唱した医者ですね。心と体の両面からの深い人間理解があり、キリスト者として素晴らしい人格者で、生前はたいへん有名だった。いまでも根強いファンがいますが、だんだん読まれなくなってくるのでしょうか。ヨルダン社も倒産したので、現在、残部が書店に少しあるだけです。
 私が数年前、トゥルニエの母国スイス、チューリッヒの小さなキリスト教書店を覗いたとき、この本だけは置いてありました。

e0079743_18405165.jpg78 ジョルジュ・ベルナノス著『田舎司祭の日記』
(新潮文庫、春秋社)The Diary of the Country Priest by Georges Bernanos

 ベルナノス(1888〜1948)は、フランスのカトリック作家。かなり前に、クリスチャンのサイトで「たいへんいい本」と言及されれいたので、前に春秋社版を購入ました。開いてみると文庫版を単行本にしたような文字がぎっしりと詰まったレイアウトで閉口しました。いつも、開いては閉じている本で、いつか読了したいのですがね・・(冷汗)。
 本書はフランスの田舎の司祭の日記というスタイルをとり、のんびりした田舎の日常に潜む悪魔の存在を追求した内容のようで、興味がつきません。サイトで調べると、残念ながら品切れ表示が多いです。(画像は春秋社版)

e0079743_18315670.jpg77 フランツ・カフカ著『審判』
 The Trial by Franz Kafka
 プラハ生まれの小説家。実存主義文学のはしり。人間の不条理を写実的文体で描いています。『審判』は、訳が数種類ある。『変身』と似たような展開。主人公が突然逮捕されて裁判にかけられます。事情はまったくあかされません。そして最後に刺し殺されて終わりです。なんともやりきれない不条理。まったくの神の不在というテーマを扱っている。遠藤周作に通じるものがあるのでしょうか。 ほかに『変身』『城』『アメリカ』が有名ですね。ちょっと気味が悪そうだし、有名すぎて私はまだ読んでいません(いいのかなぁ?)

76 アブラハム・ヘッシェル著『イスラエル預言者』(上・下) (教文館)The Prophets by Abraham Heschel

 一冊が五千円以上もする大著(買えるかなぁ〜、難解そうだなぁ〜)ユダヤ教神学者マルチン・ブーバーの後継者として認められている。その彼のもっとも代表的な著作。ヘッシェル関連の書物は教文館から何冊も出ている。

《以下、教文館のサイトより引用》
 今世紀最大のユダヤ教思想家の記念碑的業績。神のパトスとそれに照応する預言者の実存を明らかにし、周辺世界の預言現象と比較し、歴史を貫いて人間と関わり、現代も人間に働きかける神への信仰を説く。

 内容の濃い本をたくさん書いている哲学者のようで、翻訳もたくさん出ていますね。難しそうですが、いつか読んでみたい・・。

20世紀の宗教書ベスト10--100選パート(1)No100-91
20世紀の宗教書100選 パート(2)No90-81
[PR]
 現代の古典ということで、しばらく考えていましたら、Chritianity Today誌がしばらく前に発表した20世紀が生んだ宗教書100選のことを思い出しました。

「現代の宗教思想を深めていくためにも、キリスト教の信仰、キリスト教会の重要性、有効性を示す上でも重要な文献」ということで、クリスチャニティ・トゥデイが推薦した100選です。なかでもベスト10は、以前、このブログで紹介しました。そこで、その他の90冊を10冊ずつにして、たまにブログで記事にしてみようかと思います。

 ベスト10には、順位があったのですが、残りの90冊には順位がついていません。ここでは、日本で手に入りやすいものからランダムに10冊ずつ並べてみることにします。神学書、文芸、研究論文、哲学、あらゆるものが混じっています。

e0079743_14552361.jpg90 遠藤周作『沈黙』(新潮文庫)540円
 キリシタン迫害の時代を描く緊張感あふれる小説。神の不在、沈黙を正面から取り上げている衝撃的内容。宣教師の裏切り、日本人の裏切り、そのなかで殉教していくキリシタンの苦闘を描き、神の存在を問う。日本のキリスト者はほとんど読んでいるでしょうか。遠藤氏はカトリック。

89 アルベルト・カミュ『ペスト』(新潮文庫)780円
 アルジェリアのある街で、原因不明の熱病者が出ました。ペストです。必死に「悪」と闘う市民たちの姿を描き、「不条理」に直面した人々を描いています。ナチスとの闘いを想起させ、衝撃を与えた小説。


e0079743_1455632.jpg88 フィリップ・ヤンシー『誰も書かなかったイエス』(いのちのことば社)2520円
 ふつう私たちが思い描く、白人の美男として絵になっているイエス像を、本当にそのとおりなのか、と再考させる書。ヤンシーの代表作であり、神学書とも言える。(初版は誤字多し。買い直しを薦めます)

87 ヘンリ・ナウエン『傷ついた癒し人』(日本キリスト教団出版局)2100円
「傷ついたことのある人こそが傷ついた人を癒すことができる」という、イエスの姿と重ねた宣教のありかたを説いて目を開かせます。前半は難解ですが、後半からがぜん面白い。邦訳版は、『生きた想起者』(イエスを想起させる人)という他のナウエンの著作との合本。これも新鮮な霊的視点を与えてくれるすぐれもので、すこぶる面白い。

86 J.I.パッカー『神について』(いのちのことば社)4725円
 邦訳が出た当時(78年)、私の周りのかなりの人が読んでました。値が張るので私は買わなかった。500頁を越えます。原題は「Knowing God」です。Knowing about God ではありません。私は一年前、半額セールで購入(笑)。

「神をわずかしか知っていなくても(knowing God)、神について多くを知っている(knowing about God )より価値がある」(P.31)とありますが(この訳文、最後に足が捻挫しそうな文ですね。笑)、「わずかであっても神を知っているほうが、神について多くを知っているより価値がある」と訳したほうが分かりやすいのでは? これで明らかのように、「神について知る」のでなく、もっと身近に「神を知る」ことを目的で書かれた本。しか〜し、日本版の題名は『神について』だ!!  なぜ?? 本の内容を知らない人がタイトルをつけたの??
 このことを二、三年前、発行社の人に話したら、「へえ、初めてそんな指摘を受けました」と言ってました(汗)。この名著のタイトル、いったい、どうしてこうなのか?(涙)(私はかなり前に、友人の宣教師の指摘で知りました)

85 ロナルド・サイダー『餓えの時代と富むキリスト者』(聖文舎)絶版
 10年くらいまえ、聖文舎から出版されましたが、聖文舎が倒産。いまは古本でしか手に入りません。その後、原書では改訂版が出たようです。富んでいる国に住むキリスト者に対し、ライフスタイルを変えたらどうかと呼びかける問題の書。

84 ジョン・ストット『これがキリスト教です』(すぐ書房)2100円
 キリスト教の基本をわかりやすく教えてくれます。有名な聖公会牧師、J・ストットが書いた本のなかで、いちばんの世界的ベストセラー。とくに復活の意義についての説明がていねいだと記憶しています。なぜか日本でそれほど読まれていない。このブログにたまに顔を出すレジェンドさんが、こなれた日本語にしてくれてます。

83 ウィリアム・ジェームズ『宗教的経験の諸相』(上)(下)(日本教文社)
 昔、岩波文庫版があったような記憶があります。アマゾンで調べると、下巻は品切れで、上巻も中古しか手に入らないみたい。図書館でしかお目にかかれないのか・・。重要な本なんですけどね・・。

82 エリ・ヴィーゼル『夜』(みすず書房)2740円
 15歳の時のアウシュヴィッツでの体験を描く自伝小説。この世の地獄となった収容所で、少年の心の中で神が死んだことを描いて、人間存在の究極の姿を示しています。

81 ナルニア国物語シリーズ(とくに『ライオンと魔女』 他にルイス者は『悪魔の手紙』平凡社ライブラリー)
 ご存知、映画にもなった子ども向けファンタジー。もちろん大人も楽しめます。新書版、新装版、大型版といろいろな型が手に入る。挿し絵が楽しい。読んだ人が多いでしょう。

 日本人で唯一、遠藤周作が取り上げられているのはうれしい半面、複雑な心境です。信仰と不信仰、殉教と裏切り、西洋と東洋の出会いなど、いろいろな問題を含んでいますね。
 健康で快適な生活がおくれて、公には迫害を受けることない先進国に住む日本人の私にとって、つねに問題を突きつけられる書です。だから選ばれたのでしょうが、きついなぁ〜。

e0079743_15444538.jpg ところで、ベスト10のうち「Celebration of Discipline」 リチャード・フォスター著『スピリチュアリティ 成長への道』(日本キリスト教団出版局 3150円)がやっと先月の8月に出ました。待ってたよ〜。(涙)
 この世界的に有名で、世界的に影響と与えた古典が、原書が出てからすでに30年近くになってやっと。いったいどうしちゃったの、島国日本のキリスト教界!!

 学問は重んじても、実践的な指南書は軽んじる風潮があるから? それとも著者がクエーカー教徒で、日本で少数派であり、教理的な問題(例:個人的霊感を重んじる、教職制をとらない等)を含んでいるから??
 価格は高めです。訳ははたして読みやすいでしょうか・・。初版で書店から消えたら困る人は、とりあえず買ったほうがよいかも知れません。

20世紀の宗教書ベスト10--100選パート(1)No100-91
[PR]
e0079743_16251358.jpg アメリカの福音主義陣営の月刊誌「クリスチャニティ・トゥデイ(Christianity Today)」が、たしか二年くらい前に、現代の宗教家、宗教思想家の著作で、時代を超えて重要だと思えるものを100冊を挙げたリストを載せていました。読者とキリスト教界の指導者が選んだものです。さらにそのうちのベスト10がリストされていました。面白いと思ったので以下にあげてみます。

 トップ10は、重要度の順に並べてあるそうです。これらは、キリスト教信仰と教会のために重要な書物と評価された20世紀の宗教書(信仰書)の代表です。少しわたしなりのコメントと、いま日本で手に入るかも調べてみました。

(1)Mere Christianity C.S.ルイス著
  『キリスト教の精髄』 新教出版社 2940円(別訳でも出ている模様)
 祝第一位! 著者はアイルランド人。プロテスタント。ナルニア国物語で、日本でもたいへん有名。それにしてもこのタイトルは、しかつめらしい漢字使ってますね・・。なんか初めから「この本はむずかしんだぞー」って宣言してるみたい。
 英語のタイトルのMereというのは、「たんなる」「たかが」「ありのままの」という意味で、一般人が親しめるタイトルなのに・・。ルイスがラジオ番組で、分かりやすく語ったことが本になっています。英語圏では盛んに読まれているのに、日本ではそれほどでもないようです。もったいない!

(2)The Cost of Discipleship ディートリッヒ・ボンフェッファー著
  『キリストに従う』 新教出版社 3360円
 ドイツ人。ナチに反対して投獄・処刑された有名な牧師、プロテスタントの神学者。英語のタイトルと違って、日本ではドイツ語のタイトルに従ってます。日本キリスト教団系の信徒に読まれていますが、世界では福音派の多くの人が読んでいる。日本の福音派系の人々の間では、あまり読まれているとは思えません。もったいない!

(3)Church Dogmatics カール・バルト著
  『教会教義学』(全36冊) 新教出版社 9450円〜
 スイス人。プロテスタント。20世紀の神学者の巨人。新正統主義の生みの親。うはー、かなりの冊数ですね。いったい全部読んだ人はいるんでしょうか。いまは36巻のうち、日本では一部しか入手できないようです。そのボリューム、内容、価格も、一般信徒には手に負えません。日本では熱狂的な信奉者がいる一方、もう時代にあわないのではという学者もいます。

(4)The Lord of the Rings J.R.R.トールキン著
  『指輪物語』(全9巻) 評論社文庫 735円〜
 イギリス人。カトリック。新版が出て読みやすくなりました。未信者のあいだでも日本では盛んに読まれている。熱烈なファンが多い。わたしはまだ読んでませんが、映画を見て感動しました。

(5)The Politics of Jesus ジョン・ヨーダー著
  『イエスの政治』 新教出版社 3568円
 アメリカ人。プロテスタント。非暴力、絶対平和主義のメノナイト派の神学者。日本のキリスト者はぜひ読むべきなんでしょうね。わたしも持ってますが、読むのはまだ・・・・。

(6)Orthodoxy G.K.チェスタトン著
  『正統とは何か』 春秋社 2625円
 イギリス人。カトリック。イギリス人らしいウィットと逆説が得意な知識人。わたしの好きな著作家フィリップ・ヤンシーが、「孤島に流されたとして、聖書以外で持っていきたい一冊は何か」という質問に答えて、この本を指名しています。そんなにすごい本らしいです。

(7)The Seven Storey Mountain トマス・マートン著
 『七重の山 』として、以前カトリック系出版社から出ていたようですが、いまは目にすることができません。マートンはアメリカ人。カトリックのトラピスト派の修道僧、司祭として著名。修道者でありながら社会的な発言も盛んにした。すごく重要な人と思われるのに、現在、彼の訳書が少ないのはなぜでしょう。最近、『ヨナのしるし』『平和への情熱』(女子パウロ会)が出ました。しかし、この20世紀を代表する文献が日本語で読めないとは。

(8)Celebration of Discipline リチャード・フォスター著
 『霊的訓練を祝う/祝典』(邦題:スピリチュアリティ 成長への道)アメリカ人。プロテスタント。クウェーカー教徒。霊性を養う上で、英語圏のキリスト者に多大な影響を与えたこの有名な本が、ま〜だ日本で読めないんです。彼の本はほとんど訳されていない。教理的な幅広さゆえ、敬遠されているのでしょうか? そういえばアメリカでも彼のほとんどの本が、キリスト教系出版社でなく、一般の出版社から出ています。(2006年8月にやっと邦訳出版)

(9)My Utmost for His Highest オズワルド・チェンバース著
  『いと高き方のもとに』いのちのことば社 3675円
 スコットランド人。プロテスタント。バプテスト派。英語圏の間では、365日用のデボーショナルな本と言えば、まず筆頭にあげられる名著。でも、まわりで読んでいる人が少ない。『ヤベツの祈り』並に売れて当然と思うのですが、なぜ? 値段が高すぎるから? 評価する指導者が少ないから? 英語版だと豪華版、現代訳版、廉価版などたくさんあるのにね。もったいない! ネット書店、アマゾンだと中古で安く買えることもある。

(10)Moral Man and Immoral Society ラインハルト・ニーバー著
  『道徳的人間と非道徳的社会』(品切) 白水社 2730円
 アメリカ人。プロテスタント。品切れとは・・。中古を探すか? ニーバーは、「静謐の祈り」でたいへん有名ですね。関連書は10種くらい出版されていますが、現代の代表的な神学者の主著が読めない・・・。

 以上のトップ10は、英語圏のプロテスタント側の立場から選んだものですから、日本のキリスト者が選ぶと、また違ってくるのでしょう。でも、日本のキリスト教界の現状をはからずも示すものになってしまったようです。

 上にあげた邦訳版の訳文が読みやすいかどうかは、各自でご判断ください。手に入らない訳本は、図書館を訪れるしかないようです。
[PR]