「カッチーニのアベ・マリア」を知っていますか?

 90年代の終わりあたりから、こつ然として現れて有名になったと言われる名曲「カッチーニのアベ・マリア」という賛美歌(?)があります。 そのドラマチックなメロディを聴いたとき、あまりに甘美な美しさに、唖然として、「なんの曲だろう」といろいろと調べて、やっと上記の名前にたどりつきました。

 いまやシューベルトやグノーの「アベ・マリア」と並んで、重要なレパートリーになっているようです。出所、曲調からして、最初にヨーロッパで有名になったと思われます。

TV番組「金八先生」で初めて耳に
 最初に私が耳にしたのは、数年前、テレビ番組『金八先生』の最新販で、ある回の放送をたままた見ていたときです。クラスの中学生が、覚醒剤所持かなんかで学校から連行されるという過激な場面があって、彼を乗せたパトカーを、金八先生が子どもの名前を叫んで追いかける場面(スロー画面)で使われていました。音声は消え、この音楽だけが背景に流れていたのです。(この曲を聴くと、その場面が脳裏に浮かんで困ってます。)

 悲劇的というか、慟哭というか、滂沱の涙を流しながら神に嘆願するというか、深刻で、厳粛にさせられるような曲です。「なんじゃ、これ? まったく聴いたことない〜。たぶんイタリア・オペラの中の曲?」と興奮しました。ちょっと通俗的すぎるか? と思いながらも、同番組のサイトを何度も調べたり、TV局に電話して尋ねてみたりしました。笑)
 
 その後、二年、三年たち、私の周りでもだんだんと耳にするようになり、同曲をおさめたCDもいろいろ出ていることが分かってきました。

 上の女性は、スミ・ジョーというオペラ歌手。韓国出身で、カラヤンにその声を「神からの贈り物」と称された人です。口をそれほど大きく開いてないのに、この声量、音色で歌っています。すごい歌手ですね。

 下の歌手は、やはりヨーロッパで10年くらい前、大ブレークしたアンドレア・ボチェッリ。イタリア人のテノール歌手。12歳のとき、サッカーボールを頭に受けて失明。その後、弁護士になるも、テノール歌手になって夢を実現したそうです。指揮者は世界的に有名なチョン・ミュンフンという豪華さ。(私も彼のファン)


誰が作曲したかは謎
 じつはこのバロック風とも、映画音楽風とも言える曲は、出所不明だそうで、16-17世紀に活躍したジュリオ・カッチーニの名前がついているものの、ほんとは、20世紀のロシアの作曲家が作ったらしいです。名前もほぼ分かっているとのこと。
「アベ・マリア」をただ繰り返す歌詞が、どうも不自然で、その昔は、こうした作り方はしていなかったとか。どうりで近代的で、振幅の大きなドラマチックなな曲作りですよね。

マリアのどのような心を歌ったのか?
 アベ・マリアの「アベ」は、「こんにちは」とか、「ごきげんよう」とかの、話しかけるとき最初にかける言葉です。ルカの福音書で、マリアがイエスをみごもったことを天使が告げるときに、「おめでとう、恵まれた方」という言葉と関係すると思われますが、確信はありません。

e0079743_1910566.jpg この曲としらばくつきあって黙想していくうちに、この曲が持つ悲劇性を思うと、みごもったマリアをめでる曲やマリアの深い喜び、平安を歌っているものとは思えません。むしろ、のちに迎えるマリアの悲劇、息子イエスの処刑、その死による喪失の悲しみを歌ったのではないでしょうか。

 「ピエタ像」とういのがありますが、冷たいむくろとなった息子の死体を膝に抱きながら、どめどなく流す母の悲しみの涙を、慟哭するマリアの姿を、歌っているように思えてなりません。(聖書に、こうした記述はありませんが。心情は想像できます。)
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