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初期キリスト教はどうやって成長したか

初期キリスト教はどうやって成長したか_e0079743_16342158.jpg 友人の紹介で、最近出た本を知りました。『初期キリスト教とその霊性』(水垣渉著 聖恵授産所出版部 150頁 本体1500円です。4月初めに書店に並びました。

 著者は、現在、京都大学名誉教授で、長い間、キリスト教学を専門にしていらしたそうです。内容は2つの講演からなっていて、分かりやすいものになっています。ただ、初期の指導者のカタカナ名が多数出てきて、慣れていないと混乱しそう。

初期キリスト者が受けた震災
 短いこのブログでとても紹介しきれないので、一つ、二つのことを取り上げますが、第1部「初期キリスト教への招待」のなかで印象に残ったことは、天災や飢饉が福音の普及に大きな影響があったことです。私は、初期には理想的なコミュニティが形成され、迫害や誤解を受けるなかで、地道に福音が伝わっていったと受け止めていたので、予期せぬ発見でした。

 たしかに「使徒の働き」(11:27)で、アガボという人が「大飢饉が世界中に起こる」と預言し、「クラウデオの治世に起こった」とありますが、かなりの頻度で起きていたようです。教会の中心地であったシリアのアンティオキア(アンテオケ)は、ローマ支配の600年間に数百回の地震災害があったそうです。町が壊滅状態になったことも8回あったとか。当時の住宅では多数の死者が出ただろうと推測できます。また、少なくとも3回の疫病の大流行があって、死亡率25パーセント以上だったらしいです。これは、今では考えられないくらいの大惨事ですね。
 アンテオケはローマ支配時代に、平均すると15年に1回の大災害があったそうです。またAD262年には初期キリスト教の中心地、エジプトのアレクサンドリアは、人口の3分の2が疫病で亡くなったらしいです。これも壊滅的。

危機のなかでの福音伝播
 平均寿命が30歳にもならなかった当時、こうした災害、伝染病が流行るなかで、どうやって福音が広がったかですが、「永遠の命」を約束する知らせが、「今と比較にならないくらいに身に沁みて受け取られたに違いない」(P.55)と著者は言います。
 実際、380年ころの著作には、「悲惨な疫病のために多くの異教徒が自分たちの神々を捨てて、キリスト者になった」と記されているそうです。この展開には驚きました。

 現在、中国で、日本でも突然の災害が発生し、多くの人が苦しんでいます。温暖化の影響で、これからも異変が数多く起きることでしょう。そうした同じような状況のなかで、キリスト者は人々のスピリチュアルなニードに答え、被災民、取り残された孤児、病人、未亡人、社会的弱者への支援、野ざらしにされた死体の埋葬、奴隷への配慮、強制労働者の支援、旅人をもてなしたり貧しい教会を援助したりなどをしていたそうです。
 
 ですから、初期のキリスト者共同体が、福音にふさわしい生活を実践していたことが、その後の発展を招いた大きな理由の一つとしてあげています。強制的な普及活動などできる力はなく、整った教会組織もまだない時代のことです。こうしたなかで、教会側も新約聖書をまとめ、基本となる教理を明確にし、福音を伝えていく基礎を築いていきます。(続く)