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エヴァンジェリカルという言葉

教派を表すめんどうな用語
 ある人にとっては、あまりに明らかなことですが、他の人には混乱の元になる典型的なものに、「教派」や「主義」を表す用語があります。以前もこの点に触れた記事を書きました。

 これらは同じ言葉でも、国によって歴史が異なるため、違うニュアンスで使われたりします。とくに欧米のキリスト教の歴史に由来しているものが日本に持ち込まれるので、一般信徒にはわかりにくいこと甚だしい。神学校で学んだ人は、このへんはすっきりしているのでしょうか。

 40-50年くらいすると、その用語の発生した国で意味が変わっているのに、古いまま日本で使われているのもあります。さらに、一般の新聞やマスコミ、一般の出版物では、キリスト教界の現状に理解が追い付いていませんし、キリスト教出版物でも不統一なところがあるので、今でも混乱が見られます。

 福音派 ファンダメンタリスト 根本主義者 原理主義者 福音主義者

などの違いは、これまでごちゃごちゃに用いられてきたようです。もっとも、そのへんを説いた文献が出たり、マクグラス氏の書籍が紹介されたりで、最近はだいぶ改善が進んできているとは思いますが、キリスト教界以外では、まだまだ混乱したまま流府しているように思えてなりません。

 言葉は両刃の剣であり、便宜上使い始めたものがいつのまにか絶対化したり、理解を深めようとスタートしたものが、そこに感情的な壁、思いこみの壁、排他的な宗教的情熱が加わると、差別や蔑称のニュアンスで使われたりもします。

エヴァンジェリカル
「エヴァンジェリカル」を巡る用語について考えてみましょう。ここで詳細はとても扱えませんが、ちょっとした違いでかなりニュアンスが異なってきます。わたしも勉強中ですので、間違っていたら、ご指摘ください。

 ●Evangelicals(名詞:エヴァンジェリカルズ)  福音派
  福音主義的立場が中心で、その中に、保守派、原理主義派、根本主義派、社会派、ディスペンセーション主義派など、幅広く混交している。それぞれの中で右派から左派まである。
 最近はブッシュ政権を後押しているグループ、政治的派閥としてマスコミでは扱われている。福音派は、それ以外の外部の人から見ると、原理主義者の集団として見られることが多い。
 しかし、それは正確ではない。福音派は多様な集団であり、とくに日本では、世界からいろんな流れが入り込んでいる。カリスマ・ペンテコステ派、聖霊派も、アイデンティティにこだわるグループとの間では溝ができていますが、歴史的な流れをみるとに福音派でしょう。

 ●Evangelical(形容詞:エヴァンジェリカル) 福音的 伝道的 福音派的 福音主義的

 ●Evangelism(名詞:エヴァンジェリズム) 伝道 伝道活動 伝道主義 大衆伝道

 ●Evangelicalism(名詞:エバンジェリカリズム) 福音主義
  歴史的にみると、より広い運動の流れであり、教派を横断するもの。世界を見ればいまも、カトリック、聖公会内、正教会、アメリカの、あらゆる教派の中に影響を与えている運動であり、流れ。

ドイツ語ではどうか
 日本キリスト教団系出版社で盛んに出ているドイツ語をもとにした書物ではどうでしょう。

 ●Evangelisch(エファンゲリッシュ)
 ドイツのプロテスタント教会は、キルヒェ(州立教会)とフライエ・ゲマインデ(自由教会)に大きく二分されているようです。エファンゲリッシュという用語は、カトリックと異なるプロテスタント全体を指して使われます。プロテスタンティスムスという用語があるのに、それが使われないこともあるのは、「プロテスト(反対 抗議)」という原意を避けたいためでしょうか。

 これを日本語で「福音主義」と訳している本があるんですね。ですから、「Evangelische Theologie(エファンゲリッシェ・テオロギー = プロテスタント神学)が、「福音主義神学」と訳されている場合があります。これはちょっと不思議です。ドイツ神学一般が、「福音主義神学」ですか〜?
 わたしの認識が間違っているのでしょうか。すでに識者のあいだでは有名な用語の違いなんでしょうか。日本では、日本の現状を反映した、日本でしか通じない用語の使われ方がありそうです。
by amen-do | 2006-01-18 00:26 | 本 作 り