20世紀の宗教書ベスト10

e0079743_16251358.jpg アメリカの福音主義陣営の月刊誌「クリスチャニティ・トゥデイ(Christianity Today)」が、たしか二年くらい前に、現代の宗教家、宗教思想家の著作で、時代を超えて重要だと思えるものを100冊を挙げたリストを載せていました。読者とキリスト教界の指導者が選んだものです。さらにそのうちのベスト10がリストされていました。面白いと思ったので以下にあげてみます。

 トップ10は、重要度の順に並べてあるそうです。これらは、キリスト教信仰と教会のために重要な書物と評価された20世紀の宗教書(信仰書)の代表です。少しわたしなりのコメントと、いま日本で手に入るかも調べてみました。

(1)Mere Christianity C.S.ルイス著
  『キリスト教の精髄』 新教出版社 2940円(別訳でも出ている模様)
 祝第一位! 著者はアイルランド人。プロテスタント。ナルニア国物語で、日本でもたいへん有名。それにしてもこのタイトルは、しかつめらしい漢字使ってますね・・。なんか初めから「この本はむずかしんだぞー」って宣言してるみたい。
 英語のタイトルのMereというのは、「たんなる」「たかが」「ありのままの」という意味で、一般人が親しめるタイトルなのに・・。ルイスがラジオ番組で、分かりやすく語ったことが本になっています。英語圏では盛んに読まれているのに、日本ではそれほどでもないようです。もったいない!

(2)The Cost of Discipleship ディートリッヒ・ボンフェッファー著
  『キリストに従う』 新教出版社 3360円
 ドイツ人。ナチに反対して投獄・処刑された有名な牧師、プロテスタントの神学者。英語のタイトルと違って、日本ではドイツ語のタイトルに従ってます。日本キリスト教団系の信徒に読まれていますが、世界では福音派の多くの人が読んでいる。日本の福音派系の人々の間では、あまり読まれているとは思えません。もったいない!

(3)Church Dogmatics カール・バルト著
  『教会教義学』(全36冊) 新教出版社 9450円〜
 スイス人。プロテスタント。20世紀の神学者の巨人。新正統主義の生みの親。うはー、かなりの冊数ですね。いったい全部読んだ人はいるんでしょうか。いまは36巻のうち、日本では一部しか入手できないようです。そのボリューム、内容、価格も、一般信徒には手に負えません。日本では熱狂的な信奉者がいる一方、もう時代にあわないのではという学者もいます。

(4)The Lord of the Rings J.R.R.トールキン著
  『指輪物語』(全9巻) 評論社文庫 735円〜
 イギリス人。カトリック。新版が出て読みやすくなりました。未信者のあいだでも日本では盛んに読まれている。熱烈なファンが多い。わたしはまだ読んでませんが、映画を見て感動しました。

(5)The Politics of Jesus ジョン・ヨーダー著
  『イエスの政治』 新教出版社 3568円
 アメリカ人。プロテスタント。非暴力、絶対平和主義のメノナイト派の神学者。日本のキリスト者はぜひ読むべきなんでしょうね。わたしも持ってますが、読むのはまだ・・・・。

(6)Orthodoxy G.K.チェスタトン著
  『正統とは何か』 春秋社 2625円
 イギリス人。カトリック。イギリス人らしいウィットと逆説が得意な知識人。わたしの好きな著作家フィリップ・ヤンシーが、「孤島に流されたとして、聖書以外で持っていきたい一冊は何か」という質問に答えて、この本を指名しています。そんなにすごい本らしいです。

(7)The Seven Storey Mountain トマス・マートン著
 『七重の山 』として、以前カトリック系出版社から出ていたようですが、いまは目にすることができません。マートンはアメリカ人。カトリックのトラピスト派の修道僧、司祭として著名。修道者でありながら社会的な発言も盛んにした。すごく重要な人と思われるのに、現在、彼の訳書が少ないのはなぜでしょう。最近、『ヨナのしるし』『平和への情熱』(女子パウロ会)が出ました。しかし、この20世紀を代表する文献が日本語で読めないとは。

(8)Celebration of Discipline リチャード・フォスター著
 『霊的訓練を祝う/祝典』(邦題:スピリチュアリティ 成長への道)アメリカ人。プロテスタント。クウェーカー教徒。霊性を養う上で、英語圏のキリスト者に多大な影響を与えたこの有名な本が、ま〜だ日本で読めないんです。彼の本はほとんど訳されていない。教理的な幅広さゆえ、敬遠されているのでしょうか? そういえばアメリカでも彼のほとんどの本が、キリスト教系出版社でなく、一般の出版社から出ています。(2006年8月にやっと邦訳出版)

(9)My Utmost for His Highest オズワルド・チェンバース著
  『いと高き方のもとに』いのちのことば社 3675円
 スコットランド人。プロテスタント。バプテスト派。英語圏の間では、365日用のデボーショナルな本と言えば、まず筆頭にあげられる名著。でも、まわりで読んでいる人が少ない。『ヤベツの祈り』並に売れて当然と思うのですが、なぜ? 値段が高すぎるから? 評価する指導者が少ないから? 英語版だと豪華版、現代訳版、廉価版などたくさんあるのにね。もったいない! ネット書店、アマゾンだと中古で安く買えることもある。

(10)Moral Man and Immoral Society ラインハルト・ニーバー著
  『道徳的人間と非道徳的社会』(品切) 白水社 2730円
 アメリカ人。プロテスタント。品切れとは・・。中古を探すか? ニーバーは、「静謐の祈り」でたいへん有名ですね。関連書は10種くらい出版されていますが、現代の代表的な神学者の主著が読めない・・・。

 以上のトップ10は、英語圏のプロテスタント側の立場から選んだものですから、日本のキリスト者が選ぶと、また違ってくるのでしょう。でも、日本のキリスト教界の現状をはからずも示すものになってしまったようです。

 上にあげた邦訳版の訳文が読みやすいかどうかは、各自でご判断ください。手に入らない訳本は、図書館を訪れるしかないようです。
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