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講演「今日、牧師であること─ヘンリ・ナウエンに学ぶ」

 去る9月26日(月)、日本基督教団・西東京教区教師研修会で、ナウエンについての講演会がもたれました。

 講 師:大塚野百合先生(恵泉女学園大学名誉教授)
 場 所:東京都国立市 日本基督教団・国立教会
 主 題:「今日、牧師であること──ヘンリ・ナウエンに学ぶ」

講演「今日、牧師であること─ヘンリ・ナウエンに学ぶ」_e0079743_22422944.jpg 大塚先生は長年、ナウエンの著作をご自分の霊的養いのために愛読してこられ、昨年、『ヘンリ・ナウエンのスピリチュアル・メーッセージ』(キリスト新聞社)を出版し、私たちのナウエン理解に光を当てた方です。

 50名以上の教職者が参加し、大塚先生のユーモアを交えた1時間強のお話に、聴衆の皆さんは引き込まれるように耳を傾けていました。筆者も参加することができ、当社のナウエン関係の本を紹介・販売させていただくことができました。
 研修会では、午前10:30からの礼拝ののち、11時より12時過ぎまでの講演。昼食を挟んで午後1:20〜2:00まで、講演者との質疑応答の時間がありました。

 講演は最初、ナウエンの略歴に触れ、その後、『ナウエンのスピリチュアル・メッセージ』に上げられている著作にそって、その本の中に展開されているナウエンの視点と、いま日本のキリスト者、また指導者に必要とされている要素を取り上げました。

 ナウエンのたどった誰もがうらやむ輝かしい経歴、それをすべて投げ捨ててラルシュ共同体の司祭になった経緯、人間としての底知れない苦悩を体験してきたこと、次々とベストセラーとなった多くの著作活動を紹介し、20世紀が生んだ霊的著作の天才の人物像を浮き彫りにしました。

 なかでも注目されるのは、山室軍兵、森明(牧師)、植村正久、芥川龍之介、太宰治、遠藤周作、大江健三郎等の日本人に言及し、ナウエンが取り組んだ問題との関連、日本の精神文化が持つ危うさと課題を指摘した点です。

 筆者にとって印象に残ったところは、牧師に与えられた役割は、人間の小さな苦しみ(プライベートな苦しみ)をキリストの大きな苦しみ(パブリックな苦しみ)に結びづける案内役になることであり、これは、日本の精神史において革命的な意義を持つということでした。

 また、ナウエンの諸著作のエッセンスとして講師が指摘したことは、「『神がわたしを愛してくださっている』というメッセージを真に知り、受け入れることにある、そして、そうすればそうするほど、悪魔の妨げは強大になり、霊的闘いに直面させられることになる」ということでした。

 大塚先生の言葉から学んだことはまだたくさんありますが、これからの信仰の在り方、指導者の在り方等、ナウエンの著作の全貌がしだいに明らかになるにつれて、日本のクリスチャン・コミュニティがそこから学ぶべき点が、ますます多くなるのではないかと思いました。