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禅僧に現代の日本人の精神風土を聴く

 牧師の中に、日本人の精神性を理解するために仏教を専門的に学んだり、また元僧侶だった人が牧師になったりすることがあります。私も日本人のごく普通の精神風土で20代なかばまで育ったので、自分がそれまで受けてきたものは何だったのか、興味があります。

 以下の動画は、ある中堅の禅僧が現代の日本人の心の問題を語ったもので、とても言語明瞭、理解可能な言葉で語ってくれています。時間がある方は、ぜひお聴きになってみてください。

 全五回、各10分の長さで、放送は2006年。いじめ、虐待、家庭内暴力、ホリエモンの逮捕、自殺者の増加などの時代背景で語られています。ここには、なかでも中心的なものと思われる二つをリンクします。

 以下の第三回は、「いじめ」「高度成長期と豊かな時代の精神性」「自己存在をめぐる闘争」「存在が肯定される必要」「人はなぜカルトに走るのか」「ホリエモンの求めたもの」などのスピリチュアルな問題に触れています。



 以下の第四回は、「個」「わたし」「宗教の必要性」「日本の共同体の特質」「キリスト教が下地の欧米人の意識」「自殺をしてはいけない理由」「無意味を生きることに意味がある」「仏教はどう答えるか」などが話題。



4:20秒の「『教え』なんですから、まに受ける必要はないんですよ」という発言に腰が抜けました。これを、キリスト教の「教理、教義」とすると、キリスト教では物議をかもしそう。ただし、独裁的指導者による教えであれば、この指摘はキリスト教内でも通用しそうです。

ちなみに、

第一回は動画の途中から登場し、全体の序論。

第二回は「存在の不安」「生存の不安」「行きることへの不安」「なぜ生きるのかの問いと向き合い続ける」「いじめをする側の問題」

第五回は、「生きるべきか死ぬべきかの選択」「自殺者は死にたいのでなく、生きるのが困難」「大人自身が生の実感に乏しい」「聖なる空間の喪失」「子どもが子どもであることを認める大切さ」

などをめぐって語っています。

日本の伝統的な宗教者で、これだけ明晰に現代日本人の精神性に切り込んだ発言をしている人を初めて知りました。

 お時間のある方は全部を聴いても、とても参考になると思いますし、「現在の日本人が置かれている精神風土とは何か」、その中で、「キリスト者であるとはどういう土台に立つのか」を、この対談を鏡にして顧みると、とても有益だと思われます。

 それにしてもこの禅僧さんの明晰性は、西洋の哲学・思想書(キリスト教系)をたくさん読んてきた背景があるに違いないと感じます。

出演は司会:宮崎哲弥氏(評論家)
  禅僧:南直哉氏(恐山の院代)